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投影とは

扉絵

たとえばの話。

とある人が、次のような価値観で生きているとします。

「この世界は裏切りの連続なのだ」と。

もしくは、

とある人がなんらかの事情で

「自分はこれから誰かを裏切るつもり」という

心理状態だったとします。

 

いずれも「裏切り」というものに

心がとらわれている心模様です。

 

そんな価値観や心理状態の人がふいに

誰かにむかって次のように主張したとしましょう。

「あなたは、ひとを裏切るつもりですね」

 

心の中にそれがあることで、

他者の心にこそそれがあるのだと

勘違いをしてしまうというわけです。

 

唐突に言われた方は、けげんに、腹立たしく思うかも知れません。

それは必ずしも真実ではないからです。

反論として

「あなた自身がそういう心理なんじゃないですか?」と

指摘をされてもおかしくないでしょう。

無意識の投影

さて、

その人は「裏切り」という事柄に

心がとらわれているのを、自覚しているのでしょうか。

自分の心理状態をある程度は把握しているかも知れませんし、

心の奥底に隠して無自覚なのかも知れません。

 

いずれにしても

なんらか心の中の事柄について

他者の心の性質であったり他者が思っている事柄だ

とみなす(みなしてしまう)現象

心理学では『投影』と呼びます。

 

「裏切り」というものに心がとらわれている人が

『投影』によって

「あなたはひとを裏切るつもりですね」と言う。

その際、

「あなた自身がそういう心理なんじゃないですか?」という

指摘に対しては、

「言われてみればそうかも」と受け容れるのもありえますが、

反発で

「そんなことない」と否認で返すのも心ですから自然な流れです。

誰にでもあること

『投影』は特別な現象ではありません。

誰しも主観的な心を持っている以上、

全く『投影』をしないというわけにいかないのです。

 

「裏切り」にとらわれている心理は、

あくまで説明しやすい一例。

内容はなんでもです。

心の中にある事柄。心の奥に潜ませている事柄。

それを「あの人は…」「君って…」と思い込むのです。

 

『投影』そのものは誰でもしますが、

内容の違いや程度の差はあります。

また、

地味な『投影』もあれば、目立ちやすい『投影』もあります。

 

実際からかけ離れた内容の『投影』を主張するほどに

おのずから目立ちやすいと考えられます。

分かりやすいとも言えます。

  

自分個人のものであるという自覚がどこまでで、

どこから無自覚であるかは、

人によっても、事柄によっても、様々と言えるでしょう。

防衛的な投影

心は、それ自体を守ろうと働くことがあります。

心理学で防衛機制(ぼうえいきせい)と呼ばれる働きです。

 

『投影』もまた『防衛機制』として作用する場合があります。

『投影』によって心が心そのものを守るとはどういうことでしょうか?

 

(1)「自分のことだ」と認めたくない場合

自分の心の中にある事柄なのに、

それを別のなにかに属する事柄だと決めつけることによって

自分で引き受けずに済むのでしょう。

 

(2)心に抱えきれない場合

心には「抱えきれない」という現象があります。

それを外の現実に属する事柄なのだとみなすことで

抱える量を減らすかのようになるのです。

 

(3)自分の世界観を現出した方が都合が良い場合

たとえば「世界は裏切りに満ちている」とみなしておく方が

気持ちが落ち着いて安定するのなら、

積極的に決めつけを行なうでしょう。

心理カウンセラーから

今回は『投影』という心の働きを解説しました

これを読んだからといって、

むやみに「それは『投影』だ」などとひとに指摘するのは

あまりオススメできません。

相手の心にぶしつけに踏み込むようになりかねないからです。

 

ご自身の無自覚(無意識)である気がしたり、

後悔の念にさいなまれたり、

人間関係が絡むものであれば特に、

心理カウンセリングで

その悩ましさの緩和に取り組むことをご検討ください。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

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