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主体性について

今日は 『主体性』 という言葉を

心理学の視点で解説します。

 

上のイラストは人と人が話している様子ですが、

右の男性は主体性が保たれているように見えますか?

 

『主体性』というのは心を考える上で

非常に重要な概念です。

今回はこの概念を少し掘り下げてみましょう。

主体性とは

一般に「主体性」と言うと、

自分の意見を表明したり

積極的に活動するような

イメージかも知れません。

 

一方、臨床心理学では、

『主体性』は心の状態や姿勢を表す用語です

「主体的な気持ちの入った心構え」と言ってもいいでしょう。

 

仮に、受け身の姿勢であったとしても、

その人の心構えにおいて、

主体性の高い場合もあれば、

低い場合もあります。

 

例えば、いつも上司の指示に従って仕事をしている

会社員の人がいるとしましょう。

突然に、

自分で判断しなければならない状況になった時、

の姿勢として、

主体性が高ければ自ら変化に対応しようとするでしょうし、

主体性が低ければ呆然としたり気が動転したりなどするでしょう。

 

心理学での主体性とは、

「自ら積極的に活動しているかどうか」でもなければ、

その人の対応能力のことでもありません。

主体性とは、主体的な気持ちの入った心構えを意味し、

そういった状態や姿勢を説明する用語なのです。

 

それならば「主体性は高いほど良いんじゃないか」

と思うところですが、

そう一筋縄にはいきません。

主体性の高まり

主体性が高まると、

その分、責任感も高まって心に負荷が掛かってきます。

 

責任感の負荷が過剰になり許容量を超えると、

自らの負う情報量が増えすぎたり、

重荷になって、

心に問題を生じさせてしまうこともあるのです。

 

それが心理学の示すポイントです。

 

主体性は、

低すぎる放棄も問題になり得るけど、

高すぎて過剰な負荷があるのも問題になり得るのです。

望ましい主体性

ほどほどが良い、とも言えますし、

その人に合った在り方、というのでも良いですし、

状況を整理して適度な負荷にしていったり、

一時的に低すぎたら高めようとし、

高すぎたら低めようとするといった、

自らの判断で使い分けたりバランスをとれるのが

望ましい主体性であると言えるでしょう。

 

完璧な主体性など

我々のような普通の人間にはありません。

極端な話、

どんなにメンタルがタフな人でも

責任感をもって

全世界の難題を抱え込むなどできないのですから。

 

上手に主体性を保っている人は、

現実的な自己責任の範囲を見定めたり、

世の中にある「流れ」や「型」に乗っかったり、

気持ちの切り替えや妥協の判断ができていたり、

他者との明確な役割分担をしたり、サポートを得るなどして、

責任感の負荷に対する対処

できているのではないでしょうか。

 

主体性の低さに問題があるのなら、

高める工夫が要るでしょう。

ただし、

「なんでも高ければ良い」というものでもなく、

その人なりに、

状況に応じて主体性を柔軟にできるかどうか

それが負荷を適度に抑える鍵となるのです。

 

続いて、主体性の別の側面について書こうと思います。

主体性の低さについて

心の姿勢として主体性が低い場合、

責任感の負荷がかからない分、楽でしょう。

しかし、

いざ自分の感覚で責任感を持って

なにかに取り組みたい時が来た際に

思うようにいかずにどうにもならないのです。

主体性の放棄について

現実には活発に活動していても、

心の主体性が低い場合もあります。

 

心の基本姿勢としての主体性を放棄した状態で、

「仕事に専念」や

「家族のために」などと

自分以外のために頑張られる方がいます。

 

確かに、

覚悟を決めての滅私奉公というのは、

崇高にも感じられますし、

そうした必ずしも主体性を高めないあり方にも

良い人生というのはあるはずです。

 

その一方で、

心理面でよりどころを外に置いて、

主体性にともなう責任感を放棄したことによる

心地よさにおちいってしまっている、

という危うさがあるのだとしたら…。

 

個人個人が選ぶ生き方までは、

このブログで書くことは差し控えたいと思います。

 

ですが、

もしも主体性の放棄により

心の健康を損なっていくようでしたら

改めて自分の感覚というものを組み上げていく

地道な取り組みが必要となるでしょう。

主体性と心理カウンセリング

どなたにとっても、

ご自身の主体性のあり方は

検討に値するのではないでしょうか。

 

責任の範囲を広げすぎても苦しいでしょうし、

下がった状態でも(楽でしょうけれど)自分を見失います。

 

心理的な主体性の確保が上手くいかない人というのは、

周囲からはもどかしく見えてしまうかも知れません。

しかし、本人の心理を注意深く知ると、

闇雲に「主体性を高めたら良い」とも言えないのです。

 

 

ご検討の際には、心理カウンセラーがお役に立てればと思います。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

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