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ドント・シンク、フィール

扉絵

映画『燃えよドラゴン』の名台詞

考えるな、感じろ」は、

ブルース・リー

『燃えよドラゴン』のワンシーンで用いた台詞です。

 

今回は、心理カウンセリングにも通じる点をご紹介します。

 

いわゆるネタバレを含みますので、

映画を観ていない方はここで引き返しても良いと思います。

 

どんなシーンだったか振り返ってみましょう。

 

拳法の達人ブルース・リー。

とあるひとりの拳法を学ぶ若者に

次のような教えを説きます。

 

考えるな、感じろ。月を指さす時に、大事なのは指ではなく月なのだ。月に集中するんだ。指を気にしたら、大事ななにもかもをつかみ損ねてしまうぞ」

"Don't think, feel. It's like a finger pointing a way to the moon.  Do not concentrate on the finger, ...or you will miss all of the heavenly glory. "

 

このセリフのどこがカウンセリングと関係あるのか、

シーンを少し巻き戻して、みてみましょう。

シーンの背景

このシーン、まず初めに

ブルース・リーは「私に向かって蹴りを放ちなさい」と言います。

急にそんなこと言われても…って感じですが、

若者が遠慮ぎみに上段蹴りを繰り出してみせると、

 

「なんだ今のは。それが本気なのか?我々に必要なのは情にまつわるものだ」

"What was that. An exhibition? We need emotional content. "

と、たしなめられます。

しっかり感情のある蹴りを向けてこい、と言うのです。

 

人間は様々な種類の感情を持っています。

大きなもの・小さなもの、激しいもの・ゆるやかなもの、

強いもの・弱いもの、短いもの・長く続くもの、

幅広く全般的なもの・方向性の定まったもの、

外に向くもの・内に向くもの、

…そして内容も様々です。

 

カウンセリングでも、

情にまつわる体験を無視できない時があります。

もちろん必ずしも感情にまつわる話ばかりをするわけではありませんが、

心にはおのずから情にまつわるところがあるのです。

 

そうです、

ブルース・リーは、心に触れることの意味を語っていたのです。

映画は拳法の話ですが…。

ブルース・リーの教え

続くシーンはこうです。

若者の顔つきが変わり、

先ほどと同じ蹴りの型ではあるけれど、鋭いそれを披露します。

シュバッ。

しかし、ブルース・リーは満足ではない様子。

 

「私はあくまで情にまつわると言ったんだ。怒れとは言っていないだろう。もう一度だ。体験しよう、今、ここで私と

"I said, emotional content, not anger. Now try again. With me. "

 

諭された若者。

そうか、

蹴りに怒りの感情を込めろという意味ではなかったのか、と理解。

今度は、力むことなく、しなやかな蹴りを放ちます。

 

それは良い蹴りだったのでしょう。

 

ブルース・リーは無言のまま構えを解かずに次を待ちます。

若者は何も言われなくても、もう一度、

自分のタイミングで蹴りを出します。

 

「よし。これは君自身にとって、どんな感覚だった?

"That' it. How did it feel to you? "

そう言って表情を緩めるブルース・リー。

 

すでにその若者は感覚として情にまつわるなにかを体感した、

そういう展開なのです。

ブルース・リーは、もう教えるのではなく、

耳を傾けて

彼の直感的な言葉で表される彼自身の感覚について聴こうとしています。

 

頭を使って言葉を選ばずとも、上手な言い回しでなくても、

本人なりに感覚をともなって出てきたものであればなんであれ

それで充分なのでしょう。

ここであのセリフ

若者は「えっと…」という意味の英語で

「ちょっと考えてみますが…」"Let me think..."

と言い、考える仕草をします。

 

それに対しブルース・リーは若者の頭に平手を振り下ろし、

考えるな、感じろ」と言うのです。

"Don't think, Feel. "

(今の日本では叩くのはいけません。映画ですからね。)

 

ブルース・リーにとって

「考える」と「感じる」は違うのです

このシーンでも

頭で考えるのではなく、

心で感じることに重きを置いています。

 

きっと拳法では、

相手と対峙した際に考える暇が無いので、

感覚をつかむことこそが重要なのでしょう。

拳法のたしなみが無い私ですが、

たぶんそういう意味ではないかと思います。

心にとってのフィール

さて、その 一方で、

心理カウンセリングの話をしましょう。

 

人は日常生活の中で

つい情にまつわる感覚を取りこぼしたり、

頭で考えることで感覚をないがしろにしてしまう面があります。

 

なにかにつけて我慢しがちな人も、

具体的に示される数値や評価を重視しやすい人も、

感覚が敏感すぎてコントロールしきれない人も、

これに含みます。

よくあることなのです。

 

カウンセリングでは

あらためて自分自身の個人的な感覚をとらえることがカギとなり得ます。

そこに、自分の心をありのままに感じる意味があります。

 

心理学でも「考える」と「感じる」は異なります

カウンセリングも

頭で考えるのではなく、

心で感じることに重きを置いています。

 

しかし私は、ブルース・リーの拳法の教えと

カウンセリングのあり方が完全に同じとはみなしていません。

 

情にまつわるものを見落としてはいけないという点は共通しています。

ですが、違いとしては、

拳法では相対した時に考える余裕が無いという理由であり、

カウンセリングではときには時間をじっくりと使って感覚を味わうことに意味があります。

違いとして、時間の意味が挙げられます。

 

感情に触れることの大切さについては同じです。

拳法では、瞬時に動くために感情に触れる感覚を養うように、とブルース・リーは説いています。

カウンセリングでは、普段の生活で充分にケアしきれていない個人的な感情を

そのままないがしろにしないために、それなりの時間をかけましょう。

 

個人的な感情をゆがめずに扱う・感じるというのは、心に優しいのです。

共通点と、違いを、確認できましたでしょうか。

心の不思議な作用

心には不思議な作用があります。

最後に、そんな話をしたいと思います。

 

例えば、

荷物をひとりで運ぶのと、誰かと一緒に運ぶのでは、

どこか体験が違ったりもするでしょう。

ただ労力が半分になるだけではありません。

なんとなく心強かったり、

達成感を分かち合えたり、

「あの時、一緒に運んだ」と思い出になったとしたら、

心にとって良いのではないかと考えられます。

 

体験を誰か一緒にできたら、心に作用します。

  

ブルース・リーは言っていました。

先ほどのこの台詞です。

「私はあくまで情にまつわると言ったんだ。怒れとは言っていないだろう。もう一度だ。体験しよう、今、ここで私と

"I said, emotional content, not anger. Now try again. With me. "

 

情にまつわる体験を、誰かと、が重要なのです。

 

日常の中で、

情にまつわる体験をないがしろにしたり、

抑え込んだりしていませんか?

感情は自然に湧いてくるもので、

抑え込むとつらくなることもあります。

もし

ないがしろにして、つらさが増しているのなら、

心理カウンセラーにお話しください。

 

ご自身にとって

日々の体験がどんな感覚をともなっているのか

安全安心な状況で話していただける、

そんなカウンセリングの取り組みをご提供します。

一緒に取り組みましょう。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

>> はじめまして

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※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

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