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概念のサイズ

扉絵

今回は、誰もが

『概念(がいねん)』というものを通じて

世の中と関わっている

という話を書いていきます。

 

難しく聞こえるでしょうか。

読み進めるには忍耐が要るテーマかも知れません。

「難しい」と感じたら、この題材は飛ばして大丈夫です。

 

心理というものを考える際に、

実は 『概念』 というものが関わっているという話を、

順に説明していきたいと思います。

概念

「〇〇とは…」といったように

あらゆる事柄の、

それぞれについて

意味が分かるように説明したもの

それが概念です。

 

辞書や辞典には、調べたい事柄の概念の説明が載っています。

実用書や解説本で、初めの方に載っている

「〇〇とは…」という説明は、

その本が解説したいメインの事柄の

概念を示している部分だと言えるでしょう。

概念は絶対的なものではない

概念は、

簡単に説明できる場合もあれば、

できない場合もあります。

 

「鉛筆の概念は?(鉛筆とは?)」と問われたら、どうでしょうか。

ありきたりな鉛筆を、改めて言葉で説明するのです。

まずは「書く(描く)時に使うもので…」と、用途を述べるでしょうか。

「細長い木製の棒の中に黒鉛の芯が入っていて…」と形状を述べたり、

「書いた(描いた)ものを消しゴムで消せる」という情報も足すでしょうか…。

 

次に、

「パソコンの概念は?」と尋ねられたら、どうでしょう。

その説明はなかなか難しいです。

 

概念は時代によっても変化していきます。

パソコンは一昔前と比べて、できる作業が増えて、

見た目も変わりました。

 

発明によって新たな概念が生じることもあります。

既にあったものに概念が与えられることもあります。

そして、場面が異なれば意味が変わってしまうこともあります。

 

とある文化では食用とされるものが、

別の文化では神聖な存在とされる、というのは

文化の違いによって概念が変わる一例です。

 

変わらないわけでも、

固定されているのでもありません。

概念の果たす役割

概念で捉えることを

誰もが頭の中で行なっています。

それによって、あれこれと考えることができるのです。

 

さらに、ここでは、

概念が

「他の人に伝わる」であったり「他の人と共有できる」時に

役割を果たしている点に注目します。

 

誰かと対話をする際に、(回りくどい言い方をしますが)

話題に出てくる事柄の概念があらかじめ共有されていると

よりスムーズに進むことでしょう。

 

「議論をしても噛み合わないのは、

それぞれの思い描いていた概念がバラバラで

一致していなかったからだ」という状況もあるはずです。

概念のサイズとは

概念には、漠然とですが、サイズの大小があります

 

「鉛筆」という物は、広く知られています。

「鉛筆」と言うだけで、大体の人が「あれだ」と、

同じようなイメージを持つでしょう。

しかし、そこにさえ概念のサイズの違いは生じることがあります。

 

一般の人にとっての「鉛筆」は、たいてい1本、または数本でしょう。

筆箱やペン立てに入る程度をイメージされるのではないでしょうか。

 

では、鉛筆工場に勤める人にとっては、どうでしょうか?

「鉛筆」の持つ意味合いは、

「何万本もの鉛筆」や、

生活の糧となる「売り物としての鉛筆」が加わるでしょう。

そうすると概念のサイズが一般の人のそれよりも大きくなります。

 

もちろん、辞書に「鉛筆は、生産者にとっては生活の糧である」とは

書かれていません。

しかし生産者の業界では、その要素も自然と概念に含まれるのです。

概念のサイズを間違える時

上の鉛筆の例のように、

概念の持つ意味合いが異なるために、

うまく話が通じないこともあるでしょう。

 

同じものの概念でも、サイズが違っているためです。

 

買う側の立場で「鉛筆は安ければいい」と言うかも知れませんが、

生産している人には「安くなり過ぎると困る」という事情もあるでしょう。

 

また、

概念が実際にはそのサイズで存在しない場合もあります。

 

例えば、誰かが「平均的な日本人」という言葉で

何かの調査結果を報告したとします。

数値の上での平均の報告ができたとしましょう。

しかし実体として「平均的な日本人」という人は

どこにも存在しないのです。

 

示された「平均的な日本人」という概念に

当てはまらない人が実際には多いのかも知れません。

ごく一部の人にしかサイズが合っていないとすれば、

調査の内容によっては結果が無意味という場合もあります。

 

他にも、

概念のサイズを取り違えていそうな話は思い当たりますか?

 

世の中に出回っている通説の中には

「男は」「女は」「フランス人は」「アメリカでは」といった話もありますが、

「そのくくりは、サイズが大き過ぎるなぁ」と思って

ほぼ間違い無いと思います。

当てはまらない人が多すぎます。聞き流して良いでしょう。

まとめ

概念は、

・あらゆる事柄の、それぞれの意味の説明。

・我々は概念で思考している。

・意味が伝わり、意味を共有することにも意義がある。

・決して完全なものではなく、普遍的なものでもない。

・サイズの間違えが起こり得る。

 

これらは心理面にも関わってきます。

 

「概念なんて気にしなくても普通に生きていけるよ」

「なんだか難しい」などの意見があるのも分かります。

 

でも、もしかすると、

実体とは異なるサイズの概念のイメージに翻弄されていたり、

話をする相手と概念の捉え方のサイズがズレていたり、

といった問題に気づく時があるかも知れません。

 

心理カウンセリングでは、

生活の中での、他者との関わりの中での、または頭の中での

概念を再検討し、整理するお手伝いをいたします。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ

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