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ダブルバインドとは

扉絵

今日は『ダブルバインド』という用語について共有しましょう。

 

「ダブル」は「2つ」という意味で、

「バインド」は留める」や「縛る」という意味です。

 

 

グレゴリー・ベイトソンという人が広めた言葉です。

ベイトソンの肖像
ベイトソン(1904-1980)

 

このブログでは、いつものように

世の中に出回っている心理学からさらに一歩踏み込んで、

少し違う観点から書いていきたいと思うので、

ご参考にしてください。

ダブルバインド

「AかBか、どちらかを選んで」と言われて、

「A」を選ぶと「ダメ」とされるとします。

同じ関係性で、

「AかBか、どちらかを選んで」と言われて、

「B」を選んでも「ダメ」とされるとします。

 

このようにして見ると、

「なんだ。初めには自由に選んで良いかのように言ってるけど、

Aを選んでも、Bを選んでも、

どっちも結局「ダメ」とされるんじゃないか」と分かります。

 

しかし、そうと分からないまま

日常の中で繰り返されることがあります。

 

例えば、…これはつらい話ですが、

子どもが親に「赤か黒か、選んで」と言われて、

「赤」と言えば「そんな激しい色を選ぶなんて」と嫌な顔され、

「黒」と言えば「そんな暗い色を選ぶなんて」と嫌な顔されるとしましょう。

つらい!これは、相当つらい!

 

当事者である子どもは、目の前の現実に対応しているだけです。

その時々でそれらしい理由をつけられてしまったなら、

なかなか

「なんだ、どっちにしろ嫌な顔されるんじゃないか」とまでは

気づかなかったりするものです

 

そしてまた「赤か黒か、選んで」がやってきます。

子どもはつらい気持ちを抱えながら、

「正しい答えは、赤なの?黒なの?」と困惑しつつ、

その場その場で対応し、

「また間違えちゃったみたいだ」と翻弄されるばかりなのです。

 

選択をした(させられた)結果、

どっちにしろ「ダメ」とされてしまう出来事が、

客観的な把握がなされないまま繰り返し起きている、

それが『ダブルバインド』です。

責任を感じさせられてしまう

『ダブルバインド』の仕組みには、

『判断』にともなって働く

責任感関係しているのがカギではないでしょうか。

 

分かりにくいので、説明していきます。

 

自分で判断をする際には、心には

大なり小なり責任感というものが生じやすいです

言葉にしなくても、

心というのは「自分で選んだ」のだと責任のようなものを感じるのです。

なので、

責任感を負いたくない人は自分で『判断』するのを避けます。

 

『ダブルバインド』では、

たとえそれが迫られた『判断』であっても、

心理的には責任感を覚えさせられてしまっているのです。

 

それが心の中での逃げられないという心理、

すなわち「バインド」=「縛り」になってくると考えられます。

主体的な判断をくじかれてしまう

『ダブルバインド』の危険性のひとつは、

責任感をもった判断がくじかれることにあります。

 

上の例だと、

「赤か黒かを選ぶ」たびに

子どもは、

(あたかも自分で選択するという判断をし、

(一方的に)くじかれます。

 

それが繰り返されると、どうなるでしょう?

 

責任感が作用して、

主体的に『判断』することに自信を失っていきます

そして、

いつしか自らの『判断』をしなくなっていきます。

 

自信を失って『判断』ができなくなってしまうと、

心は弱い状態だと言わざるを得ません。

ダブルバインドの人間関係

『ダブルバインド』には、

自覚や意図の有り無しであったり

どうしてそうなったかといったり

という事情は別として、

それを仕掛ける側と、される側がいます。

 

両者の関係性は対等ではありません。

それに結果的にも『ダブルバインド』の存在が、

対等なコミュニケーションを不成立にさせることでしょう

 

そこに現れるのは、

支配する(しようとする)・支配される(されそうになる)

といった関係性なのです。

 

『ダブルバインド』を

仕掛けるは、

相手の判断をくじいて、主体性を損なわせ、支配者的な振る舞いをするでしょう。

される側は、

翻弄されたまま、相手に支配される関係性に陥ってしまっているのかも知れません。

ダブルバインドと心理カウンセリング

『ダブルバインド』を受けているとしたら、

まずは、それに気づくこと、

仕組みの客観的な理解が重要だと言えます。

 

しかし、心のことですので、

主体性を持つのを怖れたり、

自分で『判断』できなっている場合もあるでしょう。

 

また、

相手の支配に適応してしまって

「言いなりになっていれば楽だ」と

いう状態になっている場合もあるでしょう。

 

『ダブルバインド』を抜け出して

主体性を回復し、判断力を取り戻そうという

気持ちが芽生えてくることはカギとなります。

ただし、

どこまで『ダブルバインド』に組み込まれてしまっているか、

心の中にどのような意味を持ってしまっているのか、

それらによっても克服への道のりは違うのです。

 

心理カウンセラーは、その取り組みをお手伝いいたします。

補足

ベイトソンは

愛情や愛着関係の絡む『ダブルバインド』について、

具体例を挙げて次のように描写しました。

 

ある患者が、母親との面会時に、

ハグしようとすると嫌な顔をされ、

離れると「私のこと嫌いなの?」と反応されてしまい、

その後に精神状態が荒れたといったものです。

 

これは『ダブルバインド』の有名な解説として、

今も読まれています。

 

ここで指摘したいのは、

この具体例の心理的な問題の軸が、

『ダブルバインド』の方なのか、

それとも愛情や愛着の関係性の方なのか、

…両方が絡んでいるのでしょうけれど…、

区別がつかないという点です。

 

このブログでは、

解説を『ダブルバインド』の方に絞り、

あえて愛情や愛着の話を省くことにしました。

 

今後、関心を持って他の資料も見てみようと思われた方には、

『ダブルバインド』の構造と、愛情や愛着関係の要素とを

区別をした上で、

絡んだものとして読み解いてみることをお勧めします。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ

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