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感化について(専門編)

自己正当化の扉絵

ありがたいことに、

この 『心理ブログ』 は、

臨床心理学をバックグラウンドとして

お仕事をされている

心理の専門職の方々にも

お読みいただいております。

 

専門職の同業者の繋がりは、

いつも、ありがたく思う次第です。

 

今回のブログは、

私の勝手ながら(専門編) として、

一般向けではなく、

心理面の支援を行なっている

専門職の方々向けの内容で

書かせていただきたいと思います。

 

本来の 『心理ブログ』 のテーマである

「身近な心を、もっと身近に」からは

それてしまいますが、

ご容赦ください。

 

この回に限っては、

専門でない方には

チンプンカンプンな内容だと思いますし、

飛ばしていただいて結構です。

更新には少し期間が開くと思いますが、

また次回から

よろしくお願いします。

 

それでは、

心理支援の専門職向けの

特別編を始めます。

  

『感化』 については、

こちらの解説を

踏まえていただくこととなります。

>> (前編)はこちら

>> (後編)はこちら

 

臨床心理学において、

『感化』 の概念もしくは、それに類する概念は

あまり語られてこなかったように思いますが、

知っていると役に立つ概念だと

感じていただければ幸いです。

 

まずは、第一に、

次に記す点に注目します。

 

クライエントの思いに共感し、

相手の心の可能性を活かすべく

『見立て』 を組み立てる際、

実は、

支援をする側の心の中に(も)

『感化』 が生じます。

 

「感化について(後編)」 で述べてきた内容とは

立場の異なる支援者側の 『感化』 が

今回の主題となります。

 

ひとくちに 『感化』 と言っても

様々な性質のものが想定されます。

中でも、

心理面の支援者にとっての

「これだ」 という思いとは、なんでしょう?

それは、

クライエントの事情を把握していく中で

「自分が支援できる側面は、これだ」 の

「これだ」 の部分を指します。

 

クライエントはひとりひとり違いますから、

毎回、自らを心理支援に向かわせる上での

新たな 「これだ」 を見つけて、

自分自身の仕事に臨む姿勢に

取り込んでいるはずなのです。

 

もし、

この種の 『感化』 が欠けていたとしたら、

相手の事情を無視して

自分のオリエンテーションを

一方的に押し付けてしまっている

危険性があります。

 

では、こうした 『感化』 は、

理論の構成上、

どこに位置づけられるのでしょうか?

 

第二の話に移ります。

 

『感化』 という概念を、

『(主体的な感性としての)共感』 と

『逆転移』 の

間の位置置いてみてください。

 

この配置によって

治療構造の理解や

事例の考察が、

その都度、

より深まるのではないでしょうか。

 

よろしければ、

紙に大きめの文字で

 共感 感化 逆転移 

という順で書き出してみてください。

ただし、

これら各々の概念が連続していると

いうわけではありません。

 

もしかすると、

『逆転移』 という用語の意味(基本的には定義)を

頭に思い浮かべて、

そこから強引に

『共感』 にシフトさせようと試みた時、

その間にある、

それらのどちらとも異なる事象が

『感化』 なのだと考えてみると、

腑に落ちるかも知れません。

 

理性の働き

もしくは職業的専門性によって

適切に

自制内にコントロールしていくという

共通点はありますが、

己の中の

『感化』 をコントロールすることと、

『逆転移』 をコントロールすることは、

別のものです。

 

第三に、

上記の第一の点にも通じますが、

『感化』 が生じない支援は冷たい

言うことができます。

 

心理支援職に限りません。

例えば、

先日、テレビで

とある美容師さんの特集を観ましたが、

お仕事に取り組まれる姿勢は、

お客さんひとりひとりの思いに

丁寧に共感し、

共感的理解を伝える対話を通じて、

髪型を提案するという、

まさに 『感化』 される姿に見えました。

なにしろ

「お任せします」という若い男性にも同様に

髪質の確認などをしながら

何気ない会話を通じて、

自らが美容師として散髪に取り組む動機を

一緒に導き出していったように

少なくとも私には見えたのです。

 

この話は、

次の第四の話にも繋がるでしょう。

 

第四として、

『感化』 と対を成す概念のひとつに

『間主観性』 を置くという考え方が可能です。

 

『間主観性』 の効果的な活用を目指す過程に対して、

支援をする側の心に起きる 『感化』 という働きは、

助けもしますし、

時には妨害をしてしまう面もあります

 

第五の話。次が最後の話となります。

 

クライエントと向き合う以前のことですが、

『感化』 が判断力を低下させる

という危険性を

支援者側に当てはめてみましょう。

 

特定の技法に、

特定のオリエンテーションに、

統計データの指し示すなにかに、

先生に、

先輩に、

スーパーヴァイザーに、

なんらかの派閥に、

読んだ本の内容に、

…、…、

『感化』 されること、

それ自体は

必ずしも悪いとは言えません。

しかし、行き過ぎると 『依存』 です。

 

臨機応変な対応が求められる

職務ですので、

自律した判断力が身に付くよう

心掛けたいものです。

そのためにも、

専門家としての 『感化』 は

あって自然ですが、

『依存』 の手前に留めましょう。

 

今回は (専門編) でしたが、

いかがでしたでしょうか。

 

書き言葉なので難しく感じた方も

いらっしゃったと思います。

 

ですが、

私が講師をしている研修会や、

スーパーヴィジョン(SV)など、

対面で行なう取り組みでは

実践的な知識そして知恵として

ご理解いただけるよう

努めますので

ご安心ください。

 

読み返すと、

一方的な講義のようなブログに

なってしまっていましたが、

これは私の本来のレクチャーの

スタイルではありません。

 

実際には、本当に使える知識と知恵が

身に付くように、、

着実なステップを踏むための有効な概念を

ご紹介していきたいと思います。

 

それらの取り組みにおいても、

やはり 『依存』 ではなく自律を目指していきます。

 

どうぞ、

振るってお申込みください。

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ



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