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中間領域とは

扉絵

『中間領域(ちゅうかんりょういき)』という言葉が

心理学にあります。

 

ドナルド・W・ウィニコットという

イギリスで活動した

精神科医かつ小児科医の医師が提唱した考え方です。

 

「中間」というのは、

(1)本人の主観

(2)現実との

「間(あいだ)」のことです。

 

そうした「間」で、本人の心理面において意味を成す領域、

(3)第三のなにかについて、今回は解説をしていきます。

(1)本人の主観と(2)現実

その(3)第三のなにかを解説する前に、

まずは、

(1)本人の主観と(2)現実について、それぞれ確認しましょう。

 

<(1)本人の主観について>

人は主観を持っていて、

その中には「強い思い」や「思い込み」があったりするものです。

「幻想」と言えるぐらいの思いもあるでしょう。

程度や内容は様々ですが、

例えば、

幼い子どもが「親と離れたら絶望的」のように思い込んだり、

会社員が「この仕事で評価されなかったら、自分は無価値だ」と思い込むなどがあります。

そう考えると、

主観的な思いや思い込みが「自分には無い」もしくは「無かった」という人はいないはずです。

 

<(2)現実について>

続いて(2)現実についてですが、

ここで言う(2)現実とは、現実の全般ではなく、

(1)本人にとって主観的な「強い思い」や「思い込み」を

向けられた事物を指します。

上記の例に沿うなら、

子どもにとっての、親であったり、距離をとるという事実が…、

会社員にとっての、仕事や、それに対する評価が…、

ここで「現実」と呼ぶものに相当します。

 

個人の主観と客観的な現実は、

つい「同じものを指している」かのように思われたりもしますし、

表裏一体のような関係にありもしますが、

時として、

かけ離れていたりもします。

これは心理的な事柄ですし、

まさに心理学的な視点であるとも言えるでしょう。 

 

こうした(1)本人の主観と(2)現実との「間」にあって、

心理にとって意味を成す(3)第三のなにかとは、なんでしょうか?

(3)第三のなにか

今回、理解したいのは(3)第三のなにかですが、

それが「どこに生じるか?」と言うと、心の中です。

『中間領域』というぐらいなので、

「心の中に作られる、

主観的な思いと客観的な現実との中間的な意味を持つ領域」を指します。

その領域は心の中ですが、

現実との関わりにおいて効果をもたらすと考えられるのです。

 

<(3)第三のなにかについて>

改めて、第三のなにかである『中間領域』は、

現実と向き合う際の

「強い思い」や「思い込み」によるつらさを

和らげるクッションとなり、

より現実に則した理性的な判断を補助してくれます。

 

再び、上記の例に沿って考えてみましょう。

 

子どもが親と離れる際に、ぬいぐるみを大事にすることがあります。

そこには「柔らかく心地良いものに触れている」感覚の効果もあるでしょう。

ですが、それだけとは言えません。

ぬいぐるみへの愛着や空想などを繰り広げて、ある種の世界観が生まれ、

心に余裕がもたらされていくだろうと考えられるのです。

 

仕事の評価に捕らわれ過ぎている会社員に、

仕事と関係の無い話を気軽にできる同僚が見つかったなら、

そんな休憩時間は気が休まるでしょう。

ですが、ただ気が休まるだけなのだとは言えません。

それによって自然と、

精神的に自分を追い込みがちであったところから、

心の余裕に繋がったりもするのです。

 

『中間領域』は、

思い込みの強い主観的な世界から現実へと移行していく際に、

自身の心にとってのクッションとなるものです。

ただし、

必ずしも上記の2例のようにスムーズに上手くいくとは限りません。

直接的ではない場合や、長い目で見るべき場合も含みます。

ひとによって、それぞれ違っていて当然なのです。

イラストのように、毛布がよくある典型的な例として挙げられることもあります。

ですが、

他人から見て「まさか」と思うような意外なものが、

その人の『中間領域』の要素という場合もあるのです。

 

ちなみに、

心の中の『中間領域』が作用するようにと導く現実の事物のことを

『移行対象(いこうたいしょう)』呼びます。

例の中では、

ぬいぐるみ(または毛布)や同僚が『移行対象』なのだと考えられます。

中間領域と心理カウンセリング

心の中の『中間領域』と、

それに関連する現実の『移行対象』が、

心理的に助けになり得るというのは

お分かり頂けたでしょうか。

 

もしそこに難しさがあるとしたら、

『中間領域』が作れない、

または

『中間領域』が維持できない、

という悩ましさではないでしょうか。

 

ぬいぐるみなどに愛着や思い入れを持てない人もいるでしょう…。

せっかく心の助けになってくれる同僚でも、

いつも自分の都合に合わせてくれるわけではないでしょう…。

大事にしたくても、自分から維持できなかった経験を持つ方もいることでしょう。

 

主観的な思いは、誰もが持ちます。

客観的な現実は、誰もが直面します。

そこでクッションになる心の働き、その領域である『中間領域』は、

自分なりのものを模索して理解していくのです。

 

心理カウンセリングでは、

心の中の『中間領域』を保ち、効果的にしていくよう

ご一緒に検討できます。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ

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