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なつかしさを味わう

扉絵

なつかしさという感覚を心理学的に説明するのに、

『カタルシス』という言葉があります。

 

『カタルシス』とは、

「あ、それだ!」といった感じで、

直感的に「それ、なじむ」「うん分かる」と思える時、

心の中が浄化されるような感覚が起こることを指します。

 

なつかしさが心に染みわたる時にも、

その『カタルシス』が起きているのです。

 

こうした感覚に基づいて、

『カタルシス』を心理学的に分類すると…、

あくまで私個人の考えですが

『感動』の一種だと言ってもいいでしょう。

 

※ ちょっと最後の文章の歯切れが悪い理由は、『カタルシス』に『感動』以外の要素があるからです。なので「このブログにおいては『カタルシス』は『感動』の一種と位置づけた」とお考えください。

なつかしさは大人の体験?

子どもの頃はまだ

なつかしさの体験は少ないでしょう。

 

例えば、引っ越しをしてから数年後に

かつて住んでいたところを訪れたとしても、

まぁ、それなりのなつかしさ。

 

十年たってからの「うわぁ、なつかしい…!」というものとは

どうしても体験の質に差があります。

 

それでも、子どもにだってなつかしさの体験はあります。

「それって、小さい頃に遊んだやつだよ。なつかしい!」といったものです。

まったく無いというわけではないのです。

 

確かに大人のそれとは度合いが違うかも知れませんが、

「子どもになつかしさの感覚は無いだろう」というのは誤解です。

感動の効果

なつかしさ、『カタルシス』にからむ

『感動』の効果は、心にとって大きなものです。

 

『感動』には、

嫌な気持ちが洗い流されるような浄化の作用があり、

自分らしい素直な思いになれたり、

さらには良い感覚と繋がる現象も起こるからです。

 

最初にも書いたことですが、そこがポイントです。

カタルシスを味わう方法

『カタルシス』が心に良いものだと分かっても、

いつでも簡単に得られるわけではありません。

 

無理に引き出そうとしてもダメで、

ふいに直面した方が強く実感することもあるでしょう。

『感動』には、そういうところがあります。

 

私が思うに、テレビでも「カタルシス系」と呼べるような

『カタルシス』体験の刺激をテーマに演出された番組を見かけます。

雑誌の特集にもあります。

イベントもあります。

お店もあります。

そういった「カタルシス系」を通じて

『カタルシス』を体験できるでしょう。

「当時、これ使ってた!」「流行ってた!」という感じです。

これらは特定の年代をターゲットにしているものが多く、

なつかしさを感じるという意味では

自分の年代に合ったものを選ぶと良いようです。

 

他にも、私は経験が無いのですが、

「タイムカプセル」に思い出の品を封印したり、

「未来に届く自分あての手紙」を出す人たちもいます。

「そう言えばあの頃ってこうだったっけ!」といったように

いつか味わう『カタルシス』の布石にもなるでしょう。

 

同様に、

愛着のあるものや、なじみのあるものを

カメラで撮影したデジタルデータを

名前に「〇〇〇〇年」といった年度を記したフォルダ

いわば「カタルシス・フォルダ」に入れておく方法があります

平たく言うと、昔からある本型の「フォト・アルバム」と同じなのですが。

いつか開いた時に『カタルシス』を感じるかも、との期待があります。

長い動画だと観るのに時間がかかるので、

パッと見渡せる写真であったり短い動画の一覧がオススメです。

 

好きだった音楽を聴いて

当時の思い出が蘇るというのも一般的に「ある」とされます。

 

思い当たるものをネット検索してみるというのも良いですね。

形は様々ですが、物品、写真、音楽などで

それぞれの『カタルシス』は体験されることでしょう。

過去がつらくて仕方ない人

もちろん、

「過去はつらいことばかり、思い出したくないことばかり…」

という人もいるでしょう。

必ずしも「あの頃は良かった」とは言えない場合もあります。

いつか「あの頃の自分は自分なりにがんばったんだ」と思えるようになる

としても、

それにはさらに何年、何十年かの時間の経過が必要かも知れません…。

そういう人が『カタルシス』を感じられないかと言うと、

私はそうではないと思います。

 

つらい感覚とは離れた経験の中から探すのです。

 

なにか小さななつかしさで良いのです。

 

「学校がつらかった」「家庭環境がつらかった」「とにかくつらかった」

過去がつらくて仕方ない場合には無理にそれらの中から探そうとせず、

ちょっとでもつらさがまぎれていた時間の中から探しましょう。

 

ゆっくりと数カ月、もしくは数年かけてでも、

いま、つらくならないペースで、

なつかしさを味わえる事柄を探してみてはいかがでしょうか。

 

いつか、あなただけのなつかしさが見つかればと思います。

過去の思い出に『カタルシス』という心の浄化をともなうのなら

癒しにも支えにもなり得るからです。

思い出のリスク

なつかしさで得られる良い体験=『カタルシス』がある

その一方で、

思い出に触れることには、実はリスクもあります

 

傷ついた体験をともなう経験を思い出すこと。

その最たるものは『喪失体験』でしょう。

 

大事に思っているなにかを失い、

過去には存在していたけれど、現在には存在しない場合。

大事なもの、人、生き甲斐…。

時として心の整理のついていない思い出は

なつかしさどころではなく

『カタルシス』の良さを上回るつらさをもたらします。

 

ここで考えたいのは、

心の整理ができているかどうかとは無関係なものでも

『カタルシス』を得る方法はあるということです。

 

また、丁寧に経験を語り直すことを通じて、

つらさに邪魔されること無く

『カタルシス』を得られるようになる場合もあるでしょう。

 

今回のブログではこれ以上は深めませんが、

『カタルシス』の良さがしっかりと出るような

なつかしさを味わうことが重要と考えられます。

 

自分自身の『カタルシス』、誰かの『カタルシス』、

それらを考える時、

つらさが良さを上回ってしまうという危険性については

分かっておきたいところです。

心理カウンセリングで思い出を語る

このブログに書いてきたように、

過去のつらい体験から、思い出に触れたくない人もいるでしょう。

思い出に触れることには、つらさが伴うリスクもあります。

 

『カタルシス』を味わう方法にも様々あります。

 

思い出、なつかしさは、個人的であり

じっくりと味わっていただきたいもの

 

心理カウンセリングでは

思い出と、それにまつわるご自身の心の感じ方を

気がねなく語って

なつかしさを味わう機会にもしていただければと思います。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ

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