· 

位相とは

扉絵

誰しも心の中には

その人なりに、その時々の

関係性のとらえ方がある、

と考えられています。

 

その関係性のとらえ方を表す心理学用語のひとつに

『位相(いそう)』という言葉があります。

 

『位相』が分かれば

心のありようが見えてくるかも知れません。

位相とは

『位相』は三種類あります

 

自分だけで成り立ち、他者や対象が介在しないのが

一者無関係位相(いっしゃ・むかんけい・いそう)

 

私とあなたとだけといった二者だけで完結しているのが

二者関係位相(にしゃ・かんけい・いそう)

 

そこに第三の誰かやなにかが関係しているのが

三者関係位相(さんしゃ・かんけい・いそう)

 

これらは現実の関係性ではなく、

あくまで心の中で関係性をどうとらえているかを指します。

 

心がどのスタンスにあるのか、です。

一者無関係位相

自分だけで完結しているのが一者無関係位相です。

 

単独で成り立って無頼という意味ではとても強いです。

 

ですが、たいてい人間の心の中には個人的に

大事だと思う何かや誰かとの関係が作られているもの。

(現実とは無関係に)

 

心の中で何も関係性を形作らないというのは

珍しい状態です。

 

危機的な窮地でとっさに自分の身を守る瞬間とか、

ポワーッと酩酊状態の間、

無我の境地と言われるものなど…

誰かや何かが心の中で意味をなさない時に

一者無関係位相の心理状態と言えるでしょう。

 

なお、一者無関係位相で関係性を求めだすと

寄る辺の無さや、虚しさが感じられるでしょう。

二者関係位相

何かもしくは誰かとの直線的な関係性があるのが

二者関係位相です。

 

二者関係位相においては

現実の相手次第、関係性次第が強いです。

 

現実の関係性が安定していると、二者関係位相の心も安定しやすいです。

一方で、その関係性での傷つきに弱かったり、

依存や密着、絶望におちいりやすいなどがあります。

三者関係位相

三者関係位相は、

自分がいて、自分が大事に思う何かがあったり誰かがいて、

それに加えて他にも関わりのある何かがあったり誰かがいる、

という世界観です。

複数の関係性を心の内に持ってバランスを取ろうとします。

 

三者の「三」ですが、語源は

自分自身(←1)にとっての母性との関わり(←2)と父性との関わり(←3)

があることで、意味としても基本的にはこの三者を想定しています。

 

この内なる関係性を反映したならば

バランス次第で心に安定感がもたらされ

現実にも「社会的」で「持続的」と言えるでしょう。

心理学では

このブログでは、ものすごくざっくり書きます。

 

 

 

ジークムント・フロイトは、

三者関係位相を安定させることを

心の成熟とみなし、

目標と見定めたのです。

 

彼は二者関係位相の心理になることを『退行』と呼んで

避けるべきものととらえ、

三者関係位相を安定させようよ、

いう取り組みを理論化しました。

フロイト肖像
フロイト肖像

 

ドナルド・ウィニコットは、

二者関係位相での

傷つきを癒したり

育んでいくことに可能性を見出し

理論化しました。

『退行』も受け容れるべきだとしたのです。

ウィニコット肖像
ウィニコット肖像

 

このことだけを切り取って

「フロイトは父性的で、ウィニコットは母性的だ」と言うのは

やや単純化しすぎな気はしますが、

そういう指摘があるのも事実です。

 

位相とカウンセリング

自分が、または、周りの人が、

心の中でどの『位相』を成し、

それに基づいて現実をとらえているのかについて

理解を深めることがカウンセリングでは可能です。

 

ただし

『位相』は刻々と変わりますし、

どの『位相』でとらえがちなのかも長い目で見て変わっていきます。

けっして決めつけるものではありません。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

>> はじめまして

川越こころサポート室のロゴ

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    


↓心理ブログ一覧はこちら

心理ブログ一覧へ

↓川越こころサポート室についてのブログ一覧はこちら

心理ブログ一覧へ


電子書籍のご紹介

臨床心理学ってなに?の表紙絵

amazon kindle(電子書籍)にて発売中