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サイコパスとは

扉絵

サイコパスという言葉の使用は

特に取り扱い注意です

 

その理由は

「あの人はサイコパスだ」という決めつけにより

別の可能性を封じてしまう危険性があるためです。

 

正しく理解して慎重に用いていきたいものです。

 

今回はサイコパスという言葉を解説します。

特徴1:欲求

人それぞれに心の発する欲求があります。

生まれ持ってのものもありますし、

なにかのきっかけで心に定着するものもあるでしょう。

 

「お腹が空いた時に湧く食欲」なら多くの人に共通としても、

「食べ物に関する欲求」となれば人それぞれです。

 

「支配欲」や「攻撃的な欲求」はどうでしょうか。

それらの欲求に絡んで

ゲームで高得点を出したかったり

偉業を達成したいと思ったり

スポーツで勝ちたかったり…。

そういった欲求をより強く持つ人もいることでしょう。

楽しみやエンターテイメントにもその要素を含むものはあります。

ただ、誰かが一方的に傷つくのであれば問題です。

 

では、よりあからさまに、

「ひとを傷つけたい欲求」や「しいたげたい欲求」は

どうなのでしょうか。

確かに、人間の心にそういった欲求が生じることはありえます。

ですが、実際にそれを行なうのは

社会的にも人間関係でも危険だと言えます。

 

サイコパスの特徴のひとつは、

「ひとを傷つけたい」「しいたげたい」といった

他者に害を与えたいという欲求、

『加害の欲求』の充足を追い求めるというものです。

 

「イヤな目に遭ったから反撃した」とか、

「ウツウツとして憂さ晴らしをした」とか、

そういった攻撃性ではなく、

『加害の欲求』が充足するのを感じたいという性質です。

特徴2:感性

『共感性』というのは

相手の気持ちを自分のことのように察する心の働きです。

 

サイコパスの特徴のひとつは

『共感性』の欠如だと言えます。

相手がつらい思いをするのを「まずいことだ」と感じません。

そのため加害に際して『罪悪感』が湧いてきません。

平気で嘘をついたり、だましたりします。

相手が傷つくことを残酷でも平然とするのです。

 

一方で、

相手の弱みに付け込んで攻撃したりコントロールするための直感が

極めて鋭く働くこともあるようです。

そう考えると

「すべての感性が欠如している」というわけでもないのです。

特徴3:自己正当化

『自己正当化』というのは

心の安定のために

働くことが望ましい面もあります。

 

ただし、

サイコパスの場合の『自己正当化』とは

『加害の欲求』の行使にまつわるもの。

その行為に疑問を持つこと無く、

後悔や反省をしないという形で見られます。

 

社会の通念がそうではなくても、

サイコパスの性質を持つ本人は

「自分の加害は正当だ」と心底から思っていますし

そう主張します。

 

謝罪をしないのも特徴ですが、

「自分のせいだと納得していないから」ではなく、

「自分が謝罪する道理が無い」といった認識なのでしょう。

 

嘘をついたりだましたりするのも

それ自体が欲求の充足として感じられるからという

『加害の欲求』からきているかも知れませんし、

取りつくろいごまかすためなのかも知れません。

いずれにしても

まず『自己正当化』をし、

そして『自己正当化』を重ねるため、

周りの人にとっても本人にとっても

どうにも収拾のつかない事態になったりもするでしょう。

 

ちなみに

なんらかの欲求に対して歯止めが利きにくく

かつ強い『自己正当化』が働く場合、

精神医学には認識の仕方や行動パターンで分類する

『パーソナリティ障害』という名称のくくりがあります。

サイコパスは『パーソナリティ障害』のひとつである

『反社会性パーソナリティ障害』の類型(あらわれかたのひとつ)

みなすことができると考えられています。

なお、

反社会性という言葉の「社会」は体制やルールを指しているのではありません。

ここでの「反社会」とは、あくまで社会を織り成す仕組みや人間関係を

害するという意味です。

サイコパスとは

サイコパスとは

『加害の欲求』に純粋に従って行動し、

『共感性』や『罪悪感』の感性が欠如し、

そして『自己正当化』が

突出した性格(性格=パーソナリティ)を指します。

 

周りに、もしくは自身で思い当たる人がいても

まったくおかしなことはありません。

間違いなく、この世界に存在しているのですから。

「ひとを傷つけて平気だし、むしろ快感を覚える」

「酷いいじめの中心人物だったけど、なんとも思わない」

サイコパスの生き方

確かに犯罪で警察に捕まるサイコパスの人もいるでしょう。

一方で、サイコパスの性質はあるものの、

さいわいにも加害行為をせずに無難に暮らす場合も少なからずあります。

 

その差はなんでしょうか。

カギには、

社会に適応できるような使命感を獲得したかどうか

があるのかも知れません。

 

特殊な例と思われるかも知れませんが、

サイコパスの人は鋭い勘が働くので

犯罪者の挙動を見抜くことに長けているのではという

犯罪抑止に関する研究が進められているそうです。

「人を傷つける欲求」を「悪事を取り締まる欲求」に

差し替え、後者にやり甲斐を見出すイメージです。

サイコパスの性質さえ社会の役に立つこともあるのです。

 

この世界にサイコパスの性質を持った人が

0人になることは無いでしょう。

でしたら、

いかに他害をせずに

使命と感じられる役割に就けるか、

周りがそう導けるかも重要です。

 

ブログの最初に取り扱い注意と記したのはそのためで、

「サイコパスだ」と決めつけて排除しようとすることは

解決ではなく、むしろ暴走の危険性を高めかねません。

 

なので「サイコパスだ」という言葉は

その道の専門家以外が意味合いを理解した上で以外は

おおっぴらに使うのは好ましくないのかも知れません。

 

また、

「サイコパスの性質の持ち主には愛される資格がない」

であったり「社会不適合者なのだ」などと

決めつけることもできないと思います。

 

もちろん本人の自覚や克服する自助努力も必要でしょうし

使命ある役割以外にも工夫は望まれるでしょう。

そういった意味で、

問題の加害欲求が行動に移ることの無いような

予防的な意味での支援はあっても良いはずです。

 

サイコパスの性質のある人が

犯罪をせずに生きる方法を、仕組みを、

社会全体で考えていくことが必要だと思います。

心理カウンセラーとして

心理カウンセラーは、

被害者の側の心理的な回復のケアを

担うことが多くあります。

 

その一方で、

サイコパスの性質を持ちつつも

「犯罪をせずに生きたい」といったご相談に応じるなど

心理カウンセラーとしてできることを考えます。

 

犯罪が減ることを望んでいます。

犯罪(再犯を含む)を防止する取り組みについて

より多くの方と一緒に探っていきたいです。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

>> はじめまして

川越こころサポート室のロゴ

※ 「サイコパス」は厳密な心理学用語ではなく、その定義はあいまいです。

 当ブログでは主に『反社会性パーソナリティ障害』に則して書いています。

※ ある種の知能が高い=例えば損得の計算に長けているなどの場合に

 特徴が顕著になることもあって、

 「サイコパス」として解説されているものもあります。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    


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