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シャドウとは

扉絵

誰にでも、

「自分で気づいていない自分の一面」というのはあるでしょう。

 

なにかのきっかけで気づく場合や、

誰かを通じて「自分にはそんな面があったのか」と

知る場合もあります。

 

そうした心の中の光の当たらない影の面を指す

『シャドウ』という心理学用語があります。

 

これは「実は自分の中にあるのに、

見逃したままになっていて、

使っていない心の、ひとつの側面」とも言えます。

 

『シャドウ』にあたる要素は

心のことですので具体的に目に見えるものではありません。

そして、本人にも分かっていません。

 

気づいていなくても

さほど問題ではないという場合もあるでしょう。

 

では、

問題になる時とは、どのような時でしょう?

シャドウが問題となる時とは

例えば、

自身が、その一面を自分のこととして受け容れていない、

拒否している時です。

 

「そういうふうにはなりたくない」。

少し言い換えると、

「そういう自分にはなりたくない」。

 

誰であれ、そんな思いを持つこともあるでしょう。

 

「なりたくない自分」を思うこと自体が、

それが気になってしまっているわけで、

その人らしさの一部だとも言えそうですが…

自分の中に『シャドウ』としてあるなら、

心理面や人間関係の面に関係してくることがあるのです。

「なりたくない自分」への否定的な見方

ひとつ例を出して考えていきましょう。

 

とある働き者の人がいて、

「怠け者にはなりたくない」と思っていたとします。

 

そして、

「怠け者になってしまうこと」に対しては

嫌だ」と拒絶し、抵抗しているとします。

 

すると、自らの持つ「怠け者」的な側面に対して、

怖れたり、目を逸らしたり、悩んだり…と、

心理面にも

そこから様々な影響が生じるかも知れません。

 

また、世の中には「別に怠けたっていいじゃないか」という

考え方の人もいますが、

そういった価値観の相手に対しても、つい、

感情的になってしまうなど気持ちが乱されたり、

必要以上に否定的な態度で臨むことが起こり得ます。

 

自分自身も、人間関係も、苦しい感じになってきますよね。

 

「あの人とは価値観が合わない」という反発は

もしかすると

「そんな側面を自分が持っているのを認めたくない」という隠れた心理と、

表裏一体なのかも知れない…。

 

『シャドウ』は、

そんなところに、少しこじらせた形であらわれたりもするのです。

ユング(1875-1961)

『シャドウ』を考案したのは、

スイスで活動した精神科医の

ユングです。

 

ユングは、

様々な心の性質や要素に

独自の名前を付けていきました。

『シャドウ』もそのひとつです。

 

そして、

「それらはいずれも、誰にでも関係する

人類にとって普遍的なものだ」と

いったような提言をしたのです。

ユングの肖像画
ユング

の考え方に沿ってみると、どうでしょう?

どんな性質の要素であれ、

「自分の心にもある」

と認めていく視点が得られるというのです。

 

「誰にでも、そういった『シャドウ』と呼ばれる要素があるんですよ」というような、

その人の人格を責めたりその人の責任に落とし込んだりしないような、

ちょっと距離をとるような姿勢が、ユング理論の優しいところだと

私は思います。

 

「怠け者になりたくない」と思っている上の例の人にとっては、

「怠け者」や「怠け者の自分」のイメージが

『シャドウ』の要素となります。

 

自らの『シャドウ』を理解し、

自分の要素のひとつとして抵抗無く済むように組み入れていく、

そうした取り組みを含む

ユングの技法は『分析心理学』と呼ばれています。

分析心理学について

ユングの理論に、ところどころ

スピリチュアルっぽい非科学的な説明があることは否めません。

 

しかし、有効に用いられるのであれば問題とならないでしょう。

 

とある働き者の人がいるとして、

その人が否定するばかりであった「怠け者になりたくない自分」を

『シャドウ』の理論を通じて受けとめ、理解し、

「そういう怠け者な面が自分自身にあったって良いのだ」と

認められるようになる、

その足掛かりになるのだとしたら、

分析心理学の技法は理に適っていると言えるはずです。

シャドウと心理カウンセリング

あくまで私見ですが、

ユングの分析心理学からは、

「誰の心理にだって、そういう要素はあるのです」

「自己否定の苦しみをひとりで背負わなくていいのです」

普遍的なものに身をゆだねて癒されていくといいでしょう」

「こうすると心境が落ち着いてきませんか」

といったようなメッセージを感じます。

それらを、心を安定させていく技法として

成立させたものなのだと思います。

 

もしその理解が正しいのなら、

心理カウンセリングに来られる方に

カウンセラーが一方的に「あなたの『シャドウ』は」などと

分析心理学の独創的な理論を当てはめようとするのは

理念に反しているように思うのです。

 

あくまで、分析心理学の要素を

主体的に活用していただけるよう

提供していくのが

ユングの想定した取り組みと理解しています

 

『シャドウ』の扱いに関しても、

心理カウンセリングで「こうしたらよい」といった正解が

用意されているわけではありません。

ただ、基本的な方針としては、

『シャドウ』を受け容れることが

その人らしさに繋がっていくことをユングは示唆しています。

そして、

見えていなかった『シャドウ』を

可能性として肯定的に捉えて

改めて取り入れることで

その人の持つ力がより発揮されるようになる

といった提言がなされています。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    

※ 今回ご紹介した ユングの理論と人物像 には、

 ブログ記事用に、再解釈し単純化をしたところがございます。

鹿野 豪

川越こころサポート室のロゴ

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