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表現と表出

自己正当化の扉絵

表現(ひょうげん)』 という言葉。聞いたり、使ったりすると思います。

 

表出(ひょうしゅつ)』 については、言葉の印象から、

「なにかが表に出てくること」をイメージされるのではないでしょうか。

 

それぞれの言葉を、心理学の視点で解説します。

表出とは

まず先に、『表出』 について説明します。

『表出』 は「なにかが表に出てくること」というイメージで合っています。

 

心理学では、

心の中の事柄が

顔の表情や、しぐさ、行ないなどに出ること

『表出』 と呼びます。

 

「思わず」と頭につけても良いようなものが、たいていそうです。

「思わず笑った」や「思わずしていた」といったものは

だいたい 『表出』 と呼べるでしょう。

心の中のことが思わず出ているのです。

表出の心理

のことが表に出る 『表出』。

それは、本人にとって、

良い面もあれば、困る面もあるようです。

 

良いのは、心のことを現実に出すところです。

なにを思っているか他の人に分かってもらえる良さがあります。

それ自体がコミュニケーションの一部となっているのです。

また、

出さずに心の中に溜め込むとつらくなってしまうことがあるので、

その解放にもなるでしょう。

 

続いて、

困る面でなにがあるか、ここでは、ふたつに分けてみましょう。

 

ひとつは、

心の中の複雑なことや自分でも捉え切れていない事柄、

消化や整理できていない事柄が

思わず出てしまって、自分自身で困惑してしまうというものです。

『表出』 したことによって、恥ずかしさに身悶えて後悔したり

気持ちが不安定になってしまうかも知れません。

 

もうひとつに、

社会的に我慢が求められる場面でふさわしくないとみなされる『表出』があります。

笑ってはいけない場面で笑ったり、

腹が立ったときに憂さ晴らしに物を投げたり、

というのは

心がそうしたいという衝動に駆られても、

やってしまうと、

社会的に「ふさわしくない」とみなされるでしょう。

 

これらふたつの意味が両方とも絡む場合もあります。

 

「これが正しい『表出』だ」といった正解はありません。 

誰しもがすることですし、自然なものでもあります。

しかし、心という面で考えてみてください。

人は『表出』を

心置きなくできる時もあれば、押しとどめている時もあるのです。

表現とは

『表現』 とは、

心の中のことを、なんらかの方法で他者にも分かるように示すことです。

(参考 >>『心理ブログ』 表現を考える

 

言葉や、しぐさ、音、描画など、表現方法は様々です。

「言語表現」や「絵画表現」といった言葉もあります。

 

短かったり単発のものもあれば、

しっかり作品として成立しているものもあります。

伝わる時もあれば、伝わりにくい時もあるでしょう。

表現の心理

『表現』 が伝わったら、やはり「また伝えよう」とするものです。

工夫して伝えられた体験をした人は、

その後も「どうにか工夫すれば」という意欲を持ちやすいでしょう。

 

では、「伝えたい」と意図して行なった『表現』 が

どうにもこうにも伝わらない体験をしたら、

またはそんな体験が続いたとしたら、

心はどうなっていくと思いますか?

つらさを感じたり、「どうせ無理なんだな」と判断して、

『表現』 で伝えようとする意欲が低下していくのかも知れません。

 

『表現』に積極的かどうかは個人差があると考えられます。

内外からの刺激に対する敏感さもその要素のひとつでしょう。

環境も、周りの人との関わり方も、影響します。

表現方法を学ぶ機会が有るか無いかといった事情によっても変わるでしょう。

表出と表現の違い

『表出』は、思わず、する。

『表現』 は、伝えようとする。

おおまかに、そのように区別して良いと思います。

 

思わず笑ってしまう 『表出』、

笑った顔を誰かに向ける『表現』。

嫌なのでとっさに顔を背ける『表出』、

「それは嫌」と言葉で伝える『表現』。

ビックリ仰天して手を上にあげるのは『表出』、

注意を引くために「おーい」と手を上にあげるのは『表現』。

表出や表現の役割

『表出』 や 『表現』 の役割はともに、

心の世界と外の世界とを、繋いだり、交流させるというものです。

それが時には、本人のあり方にも関わってきます。

自身の体験としても、

周りからの見え方としても、です。

  

どちらが優劣ということでもなく、

両方を織り交ぜて、心は世界と関わるのです。

表出や表現と心理カウンセリング

『表出』 や 『表現』に関連する悩みが生じることも少なくありません。

その人が自分なりの『表出』や『表現』をしたのに対し、

反応として拒絶や批判を受けた場合などは特にです。

 

悩んで、新たに『表出』や『表現』を試すことさえ、

ためらわれる状況が続いてしまいがちです。

 

心理カウンセラーには『無条件の肯定的関心』という基本的な姿勢があります。

それは価値評価にとらわれずに、その時々のありのままに温かい関心を示すというものです。

ですから、心理カウンセリングでは、

普段は抑えがちな『表出』も、不慣れな『表現』も、

マイペースにいろいろ試して、なじんでいくことができるのです。

 

心理カウンセラーはそのような形でもお力になれると考えています。

※ 当ブログで記す 「心理カウンセリング」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。   

※ 無条件の肯定的関心は、無条件の肯定的配慮と訳されることもあります   

鹿野 豪

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