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マグカップはあるのか

扉絵

こんなワンシーンを思い浮かべてみてください。

 

テーブルの上には白いマグカップ、

さんとさんが会話をしています。


「ねぇ」

「ん?」

「そこに白いマグカップは、あるのかな?」

「え、あるでしょ。見て分からないの?」

「分かるけど。だって、それさえ不確かなものよね」

「なに?哲学の話?(笑)」

白いマグカップはあるのか

これは哲学の話です。

 

シーンを解説しましょう。

 

「白いマグカップは、あるのかな?」

そう言っているぐらいなので

さん、白いマグカップというモノがそこにあると認識してはいます。

 

ですが、他のさんにとっては

「コップなら知ってるけど、マグカップってなに?」

と、「マグカップ」の意味や用途を知らないのかもしれません。

 

「これ?これは僕の生まれ育った村で宗教的な儀式で使われてるものにそっくりだね」

というのなら、

さんにとっては儀式の道具とイメージが重なります。

それで飲むのは抵抗感があったりもするでしょう

 

色について

「「白いマグカップ」って言うけど、白って200色あんねんで」

と言う人もいるかも知れません。

「え?言われてみるとグレーっぽいかも」

というように…。

 

いずれにしても、

そこに白いマグカップはある」という事実でさえ

人によって違ったものに見えることはあるのです。

 

「自分はそこに白いマグカップがあるとは言えない」

という人がいてもおかしくありません。

イジワルとか屁理屈ではなく、

それくらい

人同士の見え方・見方にズレはあるし

人ひとりの見え方・見方は不確かなものなのです。

 

もしかすると、

「それ、底にヒビが入っていて、マグカップとして使用できないんだ。

だから飾りの置物だよね。「マグカップがある」とは言えないよ」

という、さんの知らない事情が出てくることだってあるでしょう。

 

さんが認識した「白いマグカップがそこにある」は

他の人からすると「ない」のかも知れないのです。

哲学的な考え方

『社会構成主義』や『相対主義』の考え方では、

事実はひとつではないと考えます。

 

ひとつの事柄に対して見え方・見方はひとつではありませんし、

時間とともに変化もすれば、

見る角度によって印象が変わりもします。

(詳しくは『事実という概念について』参照)

 

目の前のテーブルに白いマグカップがある、

そんなパッと見て分かりそうなことさえ

常に不確かであるといった世界観なのです。

臨床心理学の考え方

臨床心理学は、

哲学に影響を受けた・または哲学から派生した学問と言われています。

 

ひとつの事柄に対して見え方・見方はひとつではありません。

 

相手にはどう見えるか聞いたり

自分にはこう見えると伝えることで

コミュニケーションが成り立ちます。

 

そのため、事実は不確かであるというとらえ方が本質となります。

 

「目の前に白いマグカップが実際にあるんだから、

誰から見てもそうなんだろう」という考えを捨てて、

相手に「どう見えてる?」と耳を傾けるのが

臨床心理学の考え方なのです。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

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