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経験と体験

扉絵

『経験』という言葉と

『体験』という言葉があります。

 

心理学的に掘り下げてみましょう。

経験とは

『経験』は、できごとなどを指します。客観的な事実です。

 

その例として

「ジェットコースターに乗った」というのは『経験』です。

 

では『体験』とは?

体験とは

「思ってたより怖くなかった。予想外」

「めちゃくちゃ怖くてつらかった。もう二度と乗りたくない」

「スリルを味わえて最高。また乗りたい」

 

これら人によって異なる個人的なものが『体験』です。

 

『経験』ができごとなどを指すのに対して、

『体験』は心に関することを含めて指します。

 

似てますが、そんな違いがあります。

補足: 当ブログは心理学の視点で書いています。例えば職業訓練において、「経験を積む」は身につけること、「体験する」は試しにやってみること、といった使い方もされます。    

共感的理解という心理学用語

ジェットコースターが苦手な人には、

好きな人の感覚的な『体験』は

分かりにくいのではと思われます。

 

ですが、

「あの人はジェットコースターが好きだから、

あの遊園地に行ったら、乗りたいと思うだろう」

と頭で理解することはできます。

また、その際のときめく感覚を

自分がなにかしらにときめく感覚と照らし合わせて

想像することもできるでしょう。

 

逆に

ジェットコースターを好きな人にとっての

苦手な人の『体験』についても同様に、

難しいでしょうけど、おしはかることはできます。

 

このように、

「こういう『体験』をするのだろう」と理解していくのは

『共感的理解』と呼ばれています。

 

『共感的理解』はふたつの要素から成り立っています。

『共感』は感性でするところがあり、

『理解』は理性でするところがあります。

このふたつを「的」で合わせたのが『共感的理解』です。

よりよい対話を目指して

人と人との対話では自然な流れで

『経験』という客観的な事実から話されるとします。

もしそこで『体験』への関心が置き去りのままだと

内心はさみしくなっていくものです。

 

「へぇ、ジェットコースターに乗ったの?楽しいよね!」

これがジェットコースター好き同士ならOKですが、

実は苦手な人だった場合、本人の『体験』が置き去り。

そこに『共感的理解』はありません。

「ジェットコースターに乗ったの?次は何に乗った?」

これでは、できごとばかり。

 

「ジェットコースターに乗ったの?どうだった?」

このように、本人の『体験』に関心を向けて

そのまま個性として尊重することで

よりよい対話となるのではないでしょうか。

 

確かに残念なことに、世の中には

他者の『体験』にまるで『共感的理解』を示さない人がいたり

心に関わる『体験』なのに無下に批判する人がいたり

なかなか成り立ちにくい関係性もあります。

そんな誰かを変えたり

関係性を変えるのは

とても難しいのかも知れません。

 

まずは

心がけとして「自分はひとの『体験』を大事にしよう」と

念頭に置いてみたり、

また

成り立ちそうな人がいた場合に

互いの『体験』を尊重しあうところから

始めていくのも第一歩です。

 

『経験』したという事実だけではなく、

どんな『体験』をしたかの思いにも関心を向けて

その人なりのものとして尊重していくのです。

心理カウンセリングでは

心理カウンセリングでは『体験』を尊重します。

 

「これまで『体験』に関心を向けてこなかったかも知れない」

「自分の『体験』に関心を向けてくれる大人がいなかった」

など事情は様々でしょうし、

「自分は『体験』に関心を向けてきた」という人でも

いつでも語るに値すると思います。

 

『共感的理解』を通じて心に得られるのは、

より良いコミュニケーションだけではありません。

『安心感』であったり、

自分を認める感覚(『自己肯定感』)もあると考えられます。

そして、それは

誰かとの間で生まれる心の不思議な作用なのです。

 

心理カウンセリングをつうじて

カウンセラーは相談者の方の『体験』を

できるだけそのまま理解していくように

お話をお聴きします。

それがご自身の『体験』を無下にしない心の状態へ

繋がるようにと思っています。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

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