· 

仮面うつ病とは

扉絵

今回は『仮面うつ病』という用語を通じて

みなさんと 

心の働きについて掘り下げていきたいと思います。

うつ病とは

まずは『仮面うつ病』の『うつ病』の部分の解説です。

 

『うつ病』とは、

気分』が重く沈むつらさが生じて、

それとともに

できていた行動や思考や関わりができなくなったり、

ネガティブな考え方に支配されやすくなるという疾患です。

 

精神医学では『気分障害』のひとつに分類されています。

『気分』というのは心のコンディションを指す言葉。

心のコンディション面で自力だけでは困難の度合いが強い

すなわち『障害』の状態になるというものです。

 

お医者さん(主治医)に報告をしながら

治療に取り組んだり、

再発に気をつけつつ生活していくことになります。

回復の過程でカウンセリングがお役に立てることもあるでしょう。

仮面はたぶん誤訳

続いて「仮面」の話です。

 

英語では「隠すこと」を「マスク」と言います。

目を覆い隠すのは「アイマスク」。

塗装の作業で保護のために隠すのは「マスキング」です。

 

元は英語で「隠された『うつ病』だったのを、

かつて『仮面うつ病』と誤まって訳されてしまったのでしょう。

 

なかなか丁度いい日本語も見つかりません。

とりあえず

仮面という道具は素顔を隠すものなので

「『うつ病』という精神状態を隠して(マスクして)いる状態」と

みなすのなら意味は通ります。

最初のイラストもこのイメージに則しています。

ですが、イメージにとらわれてはいけません。

本人が仮面をするように隠しているわけではないのです。

 

『うつ病』を隠すのは心の作用です。

心の作用

その現象について触れていきましょう。

いったいなにが『うつ病』を隠してしまうのでしょうか?

 

2つばかり例を挙げます。

・身体に異常が無いのに心理面によって続く、腹痛。

・心理的に強くとらわれ、なにかをくり返す『強迫症』。

 

これらは別に本人が望んでいるわけではないのに

心の作用が原因で起こる症状です。

医学では「心因性の症状」

心理学では神経症と呼ばれます。

 

そういった症状が続いている間、

『うつ病』の典型的な特徴が出てこないことがあるというのです。

 

不思議です。

心が勝手に症状を選択しているのでしょうか?

個人的な見解

私は、人の心の中に

『神経症』の症状が形成されたことで

『うつ病』を症状の一部が妨げられるという働きが

あってもおかしくないと思っています。

 

経験上ですが、

若い頃、うつ状態になっていてもおかしくない

つらさや人間関係の上手くいかなさに苦しんでいた時に

『強迫症』の一種で乗り切ったことが思い当たります。

特定の言葉が頭の中にグルグルと繰り返されるタイプの

「とらわれ」が生じて、

その間は『気分』の落ち込みに

歯止めがあるかのような体験をしていたのです。

なんでしたら当時、『気分』を落ち込ませないために

意図的にその「とらわれ」を発生させたりもしました。

 

それが『仮面うつ病』だったのかどうかは別として、

『神経症』が『うつ病』の進行を妨げるという現象は

時としてあり得るのではないか、

脳にはそういった働きがあるのではないかというのが

実感と内省を通じて導き出した考えです。

 

※なお、異論は認めます。参考まで。

医学では

さて、今回

私が『仮面うつ病』をブログに取り挙げた理由。

そのひとつは、

この用語がすたれることの危惧です。

 

医学では基本的に科学的な裏付けが重視されます。

ですが性質上、

まさに上の項で私の主観でしか書けなかったように、

『仮面うつ病』のような現象は裏付けを取りにくいのです。

 

私の以外にも個人の体験の報告はあっても、

「偶然じゃないの?」「気のせいでは?」といった反論をされると

それ以上は言えないのです。

 

そのためか2021年現在、

『仮面うつ病』という用語は

正式な診断名に採用されていません。

 

ただし、概念としては残っています。

実際の診察で、お医者さんは

「この患者さんは腹痛を訴えているけど、検査に異常はみられない。

表情や話し方、状態や状況から察するに、実は『うつ病』かも…」

といった形で『仮面うつ病』が視野に入れられ、

『うつ病』治療が選択肢に入れられるのでしょう。

 

付け加えるなら、

『神経症』という用語も

ここでは腹痛と『強迫症』を例に挙げましたが、

心のなにかが原因で生じた症状を広くまとめた総称であり、

とても多種多様で、

 これも

やはり裏付けが取りにくい概念なので

医学の公的には使われなくなってきています。

 

では、

「公に使われなくなってきている用語はもう要らない」のでしょうか?

私は(心理学者の立場で恐縮ですが)、

もし事情が「科学的な裏付けがとりにくいから」だけであるなら、

たとえ医学書から記載が省かれようと

心の現象のひとつとして広く知られていて欲しいと考えています。

 

医学にとっての心理学が補い合える存在になれればとも思っています。

誤診を減らす

今回の話を通じて

私がみなさんにもっともお伝えしたかったのは、

誤診を減らしたいというメッセージです。

 

腹痛。(もしくはその他の身体の不具合)

病院に行って「検査の結果、なにも異常ありません

様子を見てください」ということも起こり得ます。

 

『強迫症』。(もしくはその他の心理上の不具合)

確かに『強迫症』を取り除く心理治療の方法はあり、

『強迫症』のみの単体であればその取り組みが適切です。

 

ただし、いずれも

もし症状の裏に『うつ病』があるのなら

そちらのケアに気を配る必要があります。

それを語れるのが『仮面うつ病』という概念です。

 

なお、過度な心配はしないでください。

このブログでは『うつ病』に関連して、

『仮面うつ病』や『神経症』の概念が

使われなくなってきているようにも書きましたが、

時にはその理解を踏まえて、または

それに代わる医学的な診断名を用いて

お医者さんは診察をしてくださることでしょう。

 

私は正直、

「心には科学では未解明な作用もあり得る」

という可能性をみなさんにご紹介したくて

あえて遠回しに述べてきました。

『神経症』(心因性の症状)に『うつ』を「隠す」作用が

あるのかも知れないという話です。

ですが、別の角度から言い換えて

「説明のつかない症状の背後には実は『うつ』があるのかも」

とシンプルな見方でも構いません。

 

私が公認心理師・臨床心理士として、みなさんに送る

本当のメッセージは次の項に書きます。 

医療機関にかかる際にできること

患者として医療にかかる際、

誤診は減らしたいものですよね。

それにはお医者さん側だけではなく、

患者の側のコツもあるというのをお伝えして

今回のブログをしめたいと思います。

 

ズバリ、私がお伝えしたいコツは

自分で感じてきた心身の異変をメモに書いて持って行く

というものです。

 

心身の不調に関してでも、生活上のストレスでも、

どんな感覚が、

いつごろから

どんな強さで、

どれくらいの頻度感じられるようになったのか、

今に至るまでの変化はどうか、

それらがお医者さんに

より的確に伝わるに越したことはありません。

憶えている範囲で書き出して伝えるのです。

 

特に、

表面的な症状と、その裏にある疾病とが

一致しない『仮面うつ病』のような場合、

そうした情報がお医者さんにとって把握のカギとなり得ます。

 

逆に「『仮面うつ病』の状態ではない」という判断こそが

適切な治療に繋がる場合もあるでしょう。

 

「メモを書く行為の時点でしんどい」という方は

書かずに医療機関に向かって良いと思います。

書けるようなら、持参して、

手渡したり、要所要所を読み上げてみるのはいかがでしょうか。

 

なお、心理カウンセラーにも

情報を整理するお手伝いや、回復のサポートなど、

お手伝いできることがあるかと思います。

また、医療に躊躇されている方もこちらをご検討ください。

鹿野の顔写真

鹿野豪

公認心理師(登録番号 : 2225)

臨床心理士(登録番号:  17852)

>> はじめまして

川越こころサポート室のロゴ

※ 当ブログで記す 「カウンセリング」「心理カウンセラー」 とは

 川越こころサポート室が提供するものを想定しております。

 他機関の専門性を保証するものではないことをご了承ください。    


↓心理ブログ一覧はこちら

心理ブログ一覧へ

↓川越こころサポート室についてのブログ一覧はこちら

心理ブログ一覧へ


電子書籍のご紹介

臨床心理学ってなに?の表紙絵

amazon kindle(電子書籍)にて発売中